意外と身近なスパイスの、日々の食生活への取り入れ方



少し前まで「プロが使うもの」と思われてきたスパイスですが、最近はご家庭で使う方も増えてきましたよね。手軽に活用する方法をスパイス料理家の山本由里子さんにお話をお聞きしました。何となく敷居の高さを感じていたスパイスは、実は手軽に素材の良さを引き出すことができる縁の下の力持ちのような存在でした。

ースパイスとは改めてどんなものか教えてください。


「いろんな人によって魅力や伝え方は違ってくると思いますが、私が一番大切にしていることは「素材の美味しさ引き出すための調味料のようなもの」ということです。スパイスは世界各国のお料理で使われており、フランスやインド、中東エリア、また日本にも柚子や山椒などの他の国にはないスパイスがあります。例えば日常生活で現地のお料理を作りたい時に、現地の食材や調味料がなくてもスパイスさえあればその味に近づけることができます。お料理の幅が広がり、日々の食卓も豊かになる食材です。」



ースパイスには身体に良い効果もあるとよく聞きますが、その魅力を教えて頂きたいです。


「スパイスによって効果は違いますが、中でも整腸作用があるものをお勧めしています。漢方などでお腹の調子を整える方法もありますが、香りがきついものも多いですよね。スパイスをお料理に取り入れることで、美味しくお腹の調子も整えることができます。スパイスにはデトックス作用などの女性に嬉しい効果もあるので、自分で効果を調べて取り入れると楽しいですよ!

また、スパイスを取り始めて、特にびっくりしたことは風邪を殆どひかなくなったことです。実は殆どのスパイスが免疫調整をしてくれる効果が期待できるんです。お料理を美味しくするために活用していたスパイスが、身体にもいい影響があると嬉しいですよね。」


スパイスはただただ料理のアクセントとしてしかイメージがなかったですが、整腸作用やデトックス作用もあるのは驚きでした。



ー山本さんのスパイスとの出会いを教えてください。


「私の両親がどちらも音楽家で、幼い頃から外食をする機会が多かったんです。街の立ち飲み居酒屋さんから高級レストランやバーまで付き添っていました。そこで美味しいと感じたお料理を大人になって思い返すと、スパイスが効いたお料理だったんです。例えばバーのチョコレートにスパイスが練り込んであったり、エスニック系のレストランに置いてある、スパイスが漬けてあるお酒を大人たちが炭酸で割って飲んでいるのも印象的でした。幼少期の記憶は不思議と鮮明で、以前食べたお料理を再現して食卓に出すとみんなが喜んでくれたことが楽しくて、今でもスパイスを活用したお料理を作っています。」



ー普段山本さんご自身はどんな活動をされていますか?


「普段はメーカーさんの商品を使ったレシピ開発をよく行っています。量販店に置いてあるレシピのリーフレットや、ホームページのレシピページに掲載して頂いています。また、企業さんからスパイス家庭料理のレッスン講師として呼んでいただくこともあります。その他、栄養価が高くて美容にも良い古代小麦(スペルト小麦)とスパイスを掛け合わせたレシピを開発して、量販店やライブ会場、レストランに提供するお仕事をしています。私が作るレシピはスパイスの香りをしっかりとさせるお料理というよりも、素材の味を引き立てる使い方をしているので、普段のご家庭での親しみのある味をより美味しく仕上げることができます。」


料理のプロとして、本当にさまざまな場面で活躍されているのですね!そんなプロの方が特に料理で使うお気に入りのスパイスはなんなのでしょうか。


ー山本さんが特によく使うスパイスを教えてください。


「よく使うスパイスは2つあります。

1つ目はカルダモンという「スパイスの女王」と呼ばれるスパイスです。他のスパイスに比べて高価ですが、エレガントな香りで少し入れるだけでお料理が格段に美味しくなります。例えばポークソテーを作る時に、カルダモンの実を潰して一緒にフライパンで焼くことで、とても良い香りがします。お塩だけで絶品になるのでお勧めです。夏の暑い日などはお肉を梅酒や梅ジュースにつけて、カルダモンで焼いても、さっぱりいただけます!」


「もう一つはコリアンダーというスパイスです。パクチーの種子の部分を乾燥させたものですが、パクチーの香りではなく柑橘系のような爽やかな香りがするのが特徴です。癖があまりないため、スパイス初心者の方にもお勧めです。よくパウダーで売っているので使い方も簡単です。お塩と混ぜて自家製スパイスソルトを作ってかけるなど、シンプルな使い方でも美味しくいただけます。揚げたてのポテトや天ぷらにかけると、夏にぴったりの爽やかな一品になりますし、浅漬けに使うとエスニックな印象になってお勧めですよ!身体にとっても嬉しい整腸作用もあるため、積極的に取り入れていただきたいスパイスです。」


想像するだけで非常に美味しそうなスパイスですね。

1種類のスパイスだけでもいろんな種類の料理に合いそうです。


「どんなお料理にもスパイスは合いますが、特に油で加熱する料理や直火料理で私はよく使います。スパイスはお米に合うものとよく合うので、豚の角煮などに入れても美味しいです。お花の形の八角や実山椒が相性抜群です。

また、ご飯のお供としては山椒の佃煮も爽やかでごはんが進みますよね!」



ースパイスってあまり売られているイメージがないのですが、山本さんは普段スパイスをどのようなところで購入されていますか?


知られていないだけでスパイスって意外と色々なところで売られているんですよ。私は用途に合わせてスパイスを買う場所を使い分けています。量が欲しい時には現地の方から入手しますし、お料理教室などより美味しいものを使いたい時はオーガニックのスパイス専門店があるのでそちらで購入します。特にスパイス専門店には調合師さんもいらっしゃるので、新しい組み合わせを見つけることができたりと勉強できます。また、ネットショップなどでは少量から販売されているので初心者の方にとって試しやすいですよね。


色々なところにスパイスがあるんですね!今度ネットなどでも意識して探してみます。ただ一つスパイスを購入して不安な点があります。



ー1度買って使い切ることができるイメージが湧かないのですが、日常へ簡単に取り入れる方法を教えて頂きたいです。


「スパイスを使うことを嫌厭してしまうきっかけの一つに、数回だけの使用で、その後使い切らずにキッチンで眠ってしまうことが挙げられると思います。スパイスは使い方がたくさんあるので、是非他のレシピでも試して欲しいです。スパイス料理を作ってみようと思ったら、まずはスパイスの基礎本を1冊制覇してみるのがお勧めです。教室に通ってみるのも仲間が増えて素敵ですよね。最初は耳掻き一杯くらいの少量からお料理に使ってみて、段々自己流で好みの量を見つけてみてください。いつものお食事がグンと美味しくなりますよ!」


少しずつスパイスを使って、いろんな場面でスパイスについて勉強し、徐々にスパイスに触れていくことが大事なのですね。



ー最後に山本さんにとってのスパイスはどんな存在か教えてください。


「私は「美味しい料理の幅を広げてくれる健康的な調味料」だと思っています。添加物も入っていないから安心ですし、普段の食卓を香りや味で華やげてくれる縁の下の力持ちのような存在です。インド料理や中華料理のようなぴりりとしたお料理にはスパイスを使うことが多いですが、敢えてスパイスをダイレクトに感じさせたくないお料理にも隠し味のような存在として是非使って頂きたいです。ほんの少し入れるだけでもほんのりお料理から爽やかな香りがして、素材の良さを引き出してくれます。オールマイティな調味料として楽しむ方が増えると嬉しいです。」




山本由里子


スパイス菓子「古代小麦と香辛料」とスパイス家庭料理教室「Delice Kitchen」を運営しながら、各メディアでのレシピ開発やイベントでのゲスト講師などもしている。5歳男の子の母でもある。


取得資格:JIAスパイスインストラクター、JSFCAスパイス香辛料ソムリエ、食品衛生責任者、他ライセンス多数


受賞歴:The World's Best Sake Pairing2^2021 5位入賞